とは言ってもおれは見える人ではない。
見てみたいとはおもう。
会話もしたい。
きっとおばけは寂しいんではないかと思う、話の出来る相手と出会うまで何年も何年もその場から離れられずに一人きりでいたとしたんならば。
もし会話ができたなら、きっとものすごい情がわくのではないだろうか・・・
たとえば
俺が一人暮らしをするために引っ越した先の部屋におばけがいたら。
やさしい気さくな女性のおばけだったら。
おばけ「はじめまして、あたしは悪いおばけじゃないから安心しな。仲良くやろうぜ青年!」
おばけ「きみは、彼女とかいないのかー?毎日暇して、若いのに寂しいやつだなあ!」
おばけ「おい、なにそわそわしてるんだ?誰からのメールを待ってるんだ?おんなか?青年」
おばけ「お、その顔はオーケーもらったな?やるじゃないか青年!お祝いしよう!」
おばけ「おい青年、朝だ!今日は初デートなんだろ?起きろ遅刻だぞ」
おばけ「え!?うちに?き、気にするな。押入れの中で耳ふさいでてやるからさ・・・」
おばけ「・・・・なぜあやまる?自然な流れだろうが。それともあたしが嫉妬するとでも?はっはっは。」
おばけ「今日もデートなのか?・・・いや、なんでもない。いってらっしゃい。」
おばけ「二日間も家を空けてまったく。あ、宅急便がきてたみたいだぞ」
おばけ「キミらもうまくいってるようだな、よく続いてるよ、うんいいことだ・・・うん」
おばけ「もうあれから五年か、女は気長に待ってはくれんぞ?青年」
おばけ「きょう?プ、プロポーズ?いや・・・・もうそこまで・・。早いんじゃ・・・ないかなぁ・・・はやいよ・・」
おばけ「そうか、婚約か。で?いつ結婚するんだ?いつまでここにいるんだ?」
おばけ「桜だ青年!もう春じゃないか。この部屋で見る最後の桜だ、眼に焼き付けておけよー!」
おばけ「いそがしそうだな、結婚式の準備ってのは。少しは休みなよ。」
おばけ「もう少しだな、結婚式・・・ え?あたし?そんなことないよ元気元気!!」
おばけ「明日か・・・早かったなあ。じゃあ今夜があたしと過ごす最後の夜なわけだな!変な気起こすなよ!」
おばけ「もう寝ろよ、明日早いんだから。お前の事だ、寝坊するぞ。はっはっは」
おばけ「なあ、気をつかってるのか?もうあたしのことはいいから寝なよ。」
おばけ「もういいから・・・。いいっていってるだろ!!」
おばけ「・・・ねたの?もういいよ・・・・バカ野郎・・・」
おばけ「おきろー!最後の最後まで世話かかせやがって!バカおい!」
おばけ「よし、忘れ物はないな?タクシーよんだか?」
おばけ「来たぞタクシー、これもって。」
おばけ「うん。じゃあさよならだな・・・」
おばけ「あたし?あたしはここから離れられないんだ、だからいけないよ。」
おばけ「一人?寂しいわけないだろ?おばけですからね!ははは」
おばけ「また、また・・・・・」
おばけ「いや、なんでもない。サヨナラ!元気でな!」
おばけ「ありがとう・・・ありがとう・・・・・・・・」
おばけ「いっちゃったよ。なに泣いてんだあいつは・・・ あたしは泣くことも出来ないのに・・・」
おばけ「あー、暑いな。もう夏も近いなあ。」
おばけ「あー死ななきゃよかったなあ・・・・」
おばけ「・・・・・さよなら青年」
さあ、あなたならどうする?
俺ならば。
言わなくてもわかりますね?
幽霊も恋はするにかな?
もしそうなら神様はやはり意地悪ですな。
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